が四方の人に知れて一の名物として賞讃されるには、三年五年ないし十年二十年の歳月を要する。しかるに人々の嗜好は年一年変化して止まないのみならず、贅沢に傾きていっそううまきものを要求するがゆえに、すでに名物として世に謳われる頃には時勢に後ること、これは免れ難き事実である。人間にあっても、名士か元老とか大将とかいわれて、万人に尊敬される頃には、多くは時勢後れの飾り物となって、実際の仕事は無名の少壮者が担任しているのが一般である。一駄菓子や掛物をもって足れりとした時代は、すでに遠き過去となり、次に餅菓子時代が来たが、これもようよう洋菓子に圧倒されかかって来た現状である。かくの如く、人間の飲食物に対する嗜好は年々歳々高尚に趣くから、昔からの名物というその名に恋々として改良を加えなければ、終に名物にうまい物なしとの一言の下に冷笑されてしまう。
それでもし昔からの名物なるものを継続させんとするならば、社会の進歩発達に伴って品質を精選すべきはもちろん、なおこれに斬新なる趣向を加え、もってその時代の嗜好に適するように工夫せねばならぬ。
また店の飾り方や家の構造は料理屋などであるならば、客室の間取りな
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