糖でもその他の原料でも、卸屋よりも二等三等以上の品を用い、実質の最善最良なるものを製造する方針を採っているゆえに、小売を目的とする製造家はとうてい卸売りすることは出来ないのである。こうして社会の趨勢は日増しに贅沢に傾き、美味きが上にもうまきを希望するようになったから、数年前売行のよかった品で、今は全く売れなくなりただ僅かに名ばかりを存しているものがある。またその需用がほとんど皆無であった上等品で、今日製造の間に合わないほど売行きのよくなったものがある。あるいは親睦会、運動会、その他凶事吉事に用いられる菓子も初めは嵩があるものという御注文であったのが、今日は数がすくなくても味の佳きものをと望まれるに至ったゆえに、幾度も繰返していうが、東京で商売を試みんとする人は、如何なる種の商売でも価は高くとも、品質最良なるものを製して売るという方針でなければ成功は覚束ないのである。
時代の移り変りに伴う商売のやり方
いかなる種類の事業に利益多きか
前項においては、各種の商業のきわめて薄利なことばかりを述べたが、天下の事業がことごとく利益の少ないものではない。中には四割五割の利益のあ
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