ある。一年半年はなはだしいのは一二ヶ月くらいで他へ譲り渡してしまうのである。これらの人々は大概田舎から田畑を売って幾何かの金を持ち来り、ことごとくかかる不馴れの仕事のために消費し尽くして、どこへか影をかくしてしまう。実にこの下宿屋営業の急激なる変化は悲惨なものである。
しかしながら、もし田舎出の素人がこの業を成さんと思うならば、これは妻君の内職として、家賃を働き出すくらいの望みをもってしなければならぬ。主人は給金取りか何か別に確実なる生活の道を立て、そして女中もおかず、妻君自ら客の膳の上げ下ろしをするつもりで、数人の下宿人をおくほどの家を借り、またやり方が巧みならば、それは必ず成功するであろう。如何なる[#「如何なる」は底本では「加何なる」]事業も、腕次第のもので、失敗するも成功するもその人の技術の如何にあるのであるが、まず誰にも出来そうな仕業は従って利益もまず薄いものであることを思わねばならない。
二、文房具屋
これまた素人の仕事としてよく歓迎せらるる商売である。資本も二三百円くらいから、どうやら店を開かれる。また小綺麗な商売であるから、書生上りの人などがよく取りつく
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