にわたりますゆえ、話題を転じ二三の所感を話しましょう。

    宮様でさえ貸間に御住居

 欧州から帰った人々の口から次のような言葉をお聞きになったことと思います。
 実に巴里の街は美しく、建築は立派だ。
 ベルリンの街は家並が揃って雅趣がある。
 日本の家は高いのがあったり低いのがあったりして見苦しい。
 そんなことを前々から聞いて居りました私は、自然とそれらの事にも注意して街々を見て廻わりました。なるほどベルリンの街は五階より低い家は造ることを許されない。またそれより高い家を造ることも許されないので全部が五階建でした。ロンドンはあまり面倒な制限がないので四階もあれば七八階もあり相当立派でした。パリは高さに制限はないが外観に重きをおいた規則があるので、外観は羨ましいような気がしました。が、さて、内部にはいって見るといずれの都会も大して羨ましい事もなく、むしろ私はこんなところに住む気にはなれなかった。
 もちろん外観は立派ですが、この堂々たる建築物も、下では商人が店を開いて居り、二階はホテル、三階は事務室、四五階には腰弁階級の人々が住って居るといった具合で、五十人百人の人々が住居し、一軒の家を一人で使っている人はほとんどない。巴里で日本の宮様が借りていらしたという家にも行って見ましたが、ただ一階だけを借りて居られたので、二階三階にはどんな人が住んで居るかわからない。
 宮様でさえかくの如き有様ですゆえ、たいがいのところは一軒の家に何十人何百人という人が住んで居ります。

    日本家屋の長所

 このように外から見ると立派な外国の建物も、種々な不快さがありまして、日本のように一軒の家は一人の所有で、他人の干渉を許さずと、云うような気持の善い所がありません。
 日本家屋は見てくれこそ悪いが、住み心地からいうと必ずしも西洋の方がいいとは言えません。外観だけ見て西洋を買いかぶることは、甚だ早計です。これは単に家屋のことばかりじゃないということは申し上げるまでもありません。

    立派な喫茶店――内幕は苦しい

 次に喫茶店、すなわちカフェーのこと。本場だけに彼方には立派な喫茶店が沢山ありました。ロンドンでは間口二十七間、奥行二十五間、五階建という大喫茶店がある。一度に二千人、三千人のお客がはいる、そして立派な音楽家が各階に三人、五人、多いところでは二十人も居て音楽
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