大であって建国の歴史なお若く、いわゆるシニセ(老舗)のなき所に在っては、店の存在を示す手段として、広告に頼るほか途がありませんから、米国人は広告に力を入れること、実に世界第一であります。しかし、英国や独逸、仏蘭西の如き、古き歴史を持つ国に在っては、信用ある店は広告を致しませんでもよく売れますので、それだけ品質に値段に勉強致しまして、広告費としては経営費の極めて小部分を割くのみであります。
我が日本では、とかく米国を真似る傾向がありまして、広告の如きも、米国に次いで世界第二であると聞いて居りますが、私はむしろ欧州に学ぶべきだと思います。
広告好きの米国に在っても、チェン・ストアは、広告費を非常に節約して、売上高の千分の四に止め、米国百貨店の千分の三十二に対して僅かに八分の一にすぎないのであります。今日チェン・ストアが百貨店を圧倒するかの如き勢いあるのも、決して偶然ではないのであります。
私の店の広告費も売上高の千分の四で、我が国百貨店の約五分の一であります。
配達料
先ほどどなたかのお話に、京都では百貨店対抗策として、共同配達の方法を講じたとの事でありましたが、私の所では店売のお客様との釣合を考慮し、また配達費の意外に莫大なる点に鑑みまして、遠方の御注文には配達料を戴くことにしてあります。これには御得意様の中にも「中村屋だけが配達料を取るとは怪しからぬ」と申される方もありますが、私の店のような安い商品を東京市中無料配達を致しましては、売上げの三割も配達費に失われ、とうてい商売は成立ちません。彼の百貨店の如く八方へ配達網をもってしましても、その配達費は意外にかさみ、三越で一戸当り三十二銭、松屋で四十銭と承りました。私の店ではおよそ五十銭となります。
そこで、私はこれが対抗策を考究致しまして、配達料として電車賃の十四銭(但し五円以上は無料)を戴くことに致しました。配達実費の三分の一にも足りませんが、その結果は意外によろしく一円以下の小口の御注文も二、三円に改まり、過半は五円以上となりまして、一戸当りの御注文平均七円を超え、売上金高に対しての配達失費は百分の六に減じました。これを三越の百分の八(売上一戸当り四円)松屋の百分の十(売上同上)に較べかえって格安となっております。
以上、申し述べました事は百貨店対抗策の一端に過ぎませんが、要するに小売商人が
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