を入れて公平を期するよう努力はしているけれど、それでも目こぼしや不行き届きがあるもので、あなた方から見れば定めし不平も不満もあるでしょう。
 全員ことごとく奮闘してくれるけれど、その中でも特に性質も善良、技術を懸命に研究する模範店員もあり、また同輩ばかりでなく、おとくいからもお小言を頂くような者もたまにはあるけれど、主人から見れば同じ吾が家の者、心得が宜しくないからといって、その者にばかり薄くするわけにはいかず、また優秀な者にばかり賞を与えることが出来ない場合もあり、与えるものの側にも相当の苦心と考慮のあるものだということを、あなた方もよく理解してもらいたいのです。
 こういう心持で、毎月質素な茶色の袋に、私たちの満腔の感謝と希望と祝福とをこめて月給を入れ、一つ一つ押し戴くようにして封をする。この時は誰も室に入ることを許さず、主人と私とただ二人で『有難う』を繰り返しながら仕事を終るのです。
 不徳な私たち、必ずしらずしらずの間にたくさんの不行き届きもあろうけれど、これは寛大な心をもってあなた方もゆるしてくれるでありましょう。

[#地から1字上げ](「一商人として」岩波書店・昭和十三年
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