を示し、それをよりどころとするようなものではありません。自己の性格を生かして、あくまでも独自の道を歩むことであるのをまだ心づかないのはどうしたことかと思います。
いついかなる場合でも正しきところに立ち、商人として充分おとくいの立場にもなって、なるべく薄利で商うようにすれば、志あれば道ありで、自ずからいかにすべきかを会得するでしょう。
月給袋を入れる時
我が中村屋では、いわゆる規則なるものを設けず、よかれあしかれ何事につけても主人対店員の間で解決し進行して、長い間いささかも不都合がなかったのでしたが、近年事業の拡張とともに人員増加し、したがって大小の事件頻々として起り、秩序が失われて思いもよらぬ弊害があらわれるようになりました。やむを得ず、私どもの最も嫌いな規則を立てて統制するという、まことに悲しい現象を見るに至りました。『こういう小むずかしい規則は昔はなかったのに』と、当時店員たちの間で不平の声がきかれたのも無理からぬことであります。
最近に至っては出勤時間を記入する設備さえ出来て、機械そのものが正確に出勤時間を記入するので、庶務係に向かって時間の割引をせよなどと文句
前へ
次へ
全236ページ中232ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング