んか』でまた寝てしまうものが多かったのです。中に一人至って気の早い愛四郎というパンの仲職人が『ソラ火事だ』と真っ先に飛び出しました。
間もなく鎮火して、愛四郎その他の者も戻ってもとの床に入りましたが、翌朝になって意外なことを発見しました。というのは、これも主人がよく話をする浅野民次郎の枕と敷蒲団が血でよごれていたのです。被害者の浅野さんは言いました。『昨晩火事があったことは知っているし、顔のところがひどく痛いと思ったがそのまま眠ってしまった。いったいどうしたのだろう』
もう包み切れない加害者の愛四郎は白状しました。『それは俺かも知れない。火事場に飛び出す時、暗闇の中でぐにゃりと生温いものを踏みつけたと思ったが、どうも浅野さんの顔を踏んだらしい。お気の毒をしました』と、浅野すかさず『鼻はだ迷惑いたしてござりす』ござりますを仙台の田舎言葉で浅野さんはござりすと言いました。しばらくはこの真面目な人の洒落で一同笑いが止らなかったが、これも笑いごとではありませんでした。
主婦の指導者おはつさん
おはつさんは先代中村屋から店とともに受げ継いだ女中で、主婦の私より四つぐらい年上でし
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