い店が持っている馴染深さ心安さを大切にせねばならぬと思う。もとより古い店の構造には今日から見て物足らなく思われるものがたくさんある。例えば現在三階を持つ中村屋にエレベーターのないことなども、あるいはその一つに数えられるかも知れない。このエレベーターのことも後でいうが、大勢おいで下さるお客様に店内が狭くて御迷惑をかけるということを第一として、我々はじつにその足らぬもの欠けているものを切々と感じ、それをも厭わずわざわざ中村屋に来て下さるお客様に対してこれではならぬと、改築の希望も出るのであるが、我々はここでもやはり分を忘れてはならぬのである。経費の点はしばらく措くとしても、大規模に改築すれば、この店が長い年月を重ねて徐々に恵まれたこの賑やかな雰囲気は失われてしまう。
 むろん新しく出来るものは、古くからあるものよりどんなに進んでいるか知れない。例えば照明のこと、ショー・ウィンドーの設け、売場の作り方、ケースの高さ等々研究の至らぬ方もなきこの頃である。下手なものの出来る筈はなく、改築とともに店は必ず見違えるほどの立派さ晴れがましさになるであろう。現にあちらでもこちらでも古い店が次第に改築され
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