はそれを情けなき限りに思へども、さてその上の術《てだて》もあらねば、やがては迷ひの雲霧も晴れて、真如の月を見る事もやと、心ならずも打過ぎぬ。
その翌年君子はある方へ嫁したりとか聞けど、花子は今も娘の名にて依然本郷なる兄の方にあり。甲田との人に知られぬ通ひ路絶へずや否、それはもとより知るよしなけれど、甲田の方には妻か妾か、花子にはあらぬ年若く美しき女の、新たに迎へられて侍れるがありとぞ。(『世界之日本』一八九七年三月)
底本:「紫琴全集 全一巻」草土文化
1983(昭和58)年5月10日第1刷発行
初出:「世界之日本」
1897(明治30)年3月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志、小林繁雄
校正:松永正敏
2004年9月20日作成
2005年11月2日修正
青空文庫作成ファイル:
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