上で、もし自分と一緒にあの部屋で寝ずの番をする勇者がなかったらば、自分ひとりで決行するつもりであるから、一夜じゅうそこに灯をつけておくことを許可してもらいたいと申し込むと、「まあ、お待ちなさい」と、船長は言った。
「私の考えを、あなたにお話し申しましょう。実は私もあなたと一緒に寝ずの番をして、どういうことが起こるかを調べてみようと思うのです。私はきっとわれわれのあいだに何事をか発見するだろうと確信しています。ひょっとすると、この船中にこっそりと潜《ひそ》んでいて、船客を嚇《おど》かしておいて何かの物品を盗もうとする奴がいないとも限りません。したがって、あの寝台の構造のうちに、怪しい機関《からくり》が仕掛けてあるかもしれませんからね」
 船長が僕と一緒に寝ずの番をするという申しいでがなかったらば、彼のいう盗人《ぬすびと》一件などはむろん一笑に付《ふ》してしまったのであるが、なにしろ船長の申しいでが非常に嬉しかったので、それでは船の大工を連れて行って、部屋を調べさせましょうと、僕は自分から言い出した。そこで、船長はすぐに大工を呼び寄せ、僕の部屋を隈なく調べるように命じて、僕らも共に百五号の船室へ行った。
 僕らは上の寝台の夜具をみんな引っ張り出して、どこかに取り外しの出来るようになっている板か、あるいはあけたての出来るような鏡板でもありはしまいかと、寝台はもちろん、家具類や床板をたたいてみたり、下の寝台の金具をはずしたりして、もう部屋のなかに調べない所はないというまでに調査したが、結局なんの異状もないので、またもとの通りに直しておいた。僕らがその跡始末をしてしまったところへ、ロバートが戸口へ来て窺った。
「いかがです、何か見つかりましたか」と、彼はしいてにやにやと笑いながら言った。
「ロバート、窓の一件ではおまえのほうが勝ったよ」と、僕は彼に約束の金貨をあたえた。
 大工は黙って、手ぎわよく僕の指図通りに働いていたが、仕事が終わるとこう言った。
「わっしはただのつまらねえ人間でござんすが、悪いことは申しませんから、あなたの荷物をすっかり外へお出しになって、この船室の戸へ四インチ釘を五、六本たたっ込んで、釘付けにしておしまいなさるほうがよろしゅうござんすぜ。そうすれば、もうこの船室から悪い噂も立たなくなってしまいます。わっしの知っているだけでも、四度の航海のうちに、この部
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