うったえました。じつは、その着物は、大きな石の下にかくしておいたのです。けれど、猫のいうことが、さもほんとうらしくきこえるので、王様は、御殿の衣裳《いしょう》べやのかかりにいいつけて、いちばん上等な着物を、いそいで持って来て、カラバ侯爵《こうしゃく》にお着せ申せ、とおっしゃいました。
王様は、侯爵《こうしゃく》をたいへんていねいにもてなして、ごじぶんの、りっぱな着物を着せました。ところで、猫吉の主人は、生まれつきりっぱなようすの男でしたから、その着物を着ると、いかにも侯爵《こうしゃく》らしい上品なひとがらになりました。それを見た王様のお姫《ひめ》さまは、すっかり侯爵《こうしゃく》がすきになりました。そこで、王様は侯爵《こうしゃく》にすすめて、馬車に乗せて、いっしょに旅をすることにしました。
猫吉は、じぶんのけいりゃくが、うまくあたったので、だいとくいで、馬車よりも先へあるいて行きました。すこし行くと、まきばの草を刈《か》っているお百|姓《しょう》たちに出あいました。すると猫吉は、
「もうじき王様が馬車に乗ってお通りになるが、そのとき、このまきばはだれのものだ、といっておたずねになったら、これはカラバ侯爵《こうしゃく》のものだと、おこたえしなければいけないぞ。もしそうしなかったら、それこそ植木鉢《うえきばち》にはえたちいさな草を引っこ抜くように、おまえたちの首を、引っこ抜いてしまうぞ。」といって、すっかりお百|姓《しょう》たちを、おどしつけました。
王様が、やがてそこを、お通りかかりになりますと、なるほど猫吉のおもったとおり、このまきばは、だれのものだ、とおたずねになりました。けれどお百姓たちは、すっかり猫吉におどかされていましたから、
「わたしどものご主人、カラバ侯爵《こうしゃく》さまのものでございます。」と、みんな声をそろえて、こたえました。
王様は、うまうまと、だまされておしまいになりました。そして、侯爵《こうしゃく》にむかって、まじめにおよろこびをおっしゃいました。
「どうもたいした土地《とち》もちでおいでだな。」
そこで侯爵《こうしゃく》は、すかさず、そのあとについて、
「ごらんのとおり、このまきばからは、まい年、なかなかたくさんな取りいれがございますので。」と申しました。
四
まずこういうやり方で、猫吉|親方《おやかた》は
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