はなれわざをするのを知っていましたから、なにかつごうして、さしあたりのなんぎを、すくってくれるくふうがあるのかもしれない、とおもって、とにかく、猫のいうままに、袋と長ぐつをこしらえてやりました。

         二

 猫吉|親方《おやかた》は、さっそく、その長ぐつをはいて、袋を首にかけました。そして、ふたつの前足で、袋のひもをおさえて、なかなか気取ったかっこうで、兎《うさぎ》をたくさん、はなし飼《が》いにしてあるところへ行きました。そこで、猫は、袋の中にふすま[#「ふすま」に傍点]とちしゃ[#「ちしゃ」に傍点]を入れて、遠くのほうへほうりだしておきました。そこから、袋のひもを長くのばして、そのはしをつかんだままじぶんはこちらに長ながとねころんで、死んだふりをしていました。こうして、まだ世の中のうそを知らない若い兎たちが、なんの気なしに、袋の中のものをたべに、もぐりこんでくるのを待っていました。あんのじょう、もうさっそく、むこう見ずの若い、ばか兎が一ぴき、その袋の中へとびこみました。猫吉|親方《おやかた》は、ここぞと、すかさずひもをしめて、その兎を、なさけようしゃもなくころしてしまいました。そうして、それを、えいやっとかついで、鼻たかだかと、王様の御殿へ出かけて、お目どおりをねがいました。
 猫吉は、王様のご前《ぜん》へ出ると、うやうやしくおじぎをして、
「王様、わたくしは、主人カラバ侯爵《こうしゃく》からのいいつけで、きょう狩場《かりば》で取りましたえものの兎を一ぴき、王様へけん上にあがりました。」
 カラバ侯爵《こうしゃく》というのは、猫吉がいいかげんに、じぶんの主人につけたなまえですが、王様はそんなことはご存《ぞん》じないものですから、
「それは、それは、ありがとう。ご主人に、どうぞよろしく御礼をいっておくれ。」と、おっしゃいました。
 猫吉は、ばんじうまくいったわいと、心の中ではおもいながら、
「はいはい、かしこまりました。」と、申しあげて、ぴょこ、ぴょこ、おじぎをして、かえって来ました。
 そののちまた、猫吉は、こんどは、麦畠の中にかくれていて、れいの袋をあけて待っていますと、やまどりが二羽かかりました。それを二羽ともそっくりつかまえて、兎とおなじように、王様の所へもって行きました。
 それからふた月三月のあいだというもの、しじゅうカラバ侯爵《こうしゃ
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