ひ」に傍点]の上にかけあがりました。しばらくたって人くい鬼が、やっと、もとどおりのすがたになったのを見すまして、猫吉はそろそろ、かけひ[#「かけひ」に傍点]からおりて来ました。
「どうも、じつに、おどろきました。わたくしは、今にもひとつかみになさるかと思って、ぶるぶるふるえていたのでございますよ。ところで、これも人から聞きました話で、あてにはなりませんが、あなたはまた、ずっと小さなけもの、たとえばねずみなら、はつかねずみのような小ねずみなんかにでも、なろうとおもえばおなりになれるということですが、まさかねえ、こればかりは、とても信じられませんが。」
 こういって、猫は、うたがいぶかいような目をしました。
「なに、信じられん。」と、人くい鬼はおこってさけびました。「よしよし、すぐ小ねずみになって見せよう。」
 人くい鬼は、いうまに、一ぴきのはつかねずみにかわってしまいました。そして、ちょろ、ちょろ、床《ゆか》の上をかけまわりました。猫吉はしめたというなり、すばやく、小ねずみにとびかかるが早いか、あたまから、むしゃむしゃと、たべてしまいました。

         五

 そのとき、お城のそとのつり橋を、王様の馬車のわたってくる音がきこえました。猫吉は、その音を聞きつけると、さっそく、お城の門のところへ出て行って、王様にこう申しました。
「さあ、どうぞ、王様には、カラバ侯爵《こうしゃく》のお城におはいりくださいまするよう。」
 王様は、さっきからこのお城に気がついていました。そして、だれのお城だか知らないが、中はさぞかしりっぱだろうから、はいってみたいものだと、おおもいになっていたところでした。ですから、猫吉がそういうのを聞くと、ますますおどろいておしまいになりました。
「なに、これも侯爵《こうしゃく》のお城。いやどうも、お庭といい、建物《たてもの》といい、こんなりっぱなお城は見たことがないわい。では、拝見《はいけん》しよう。どうぞ案内《あんない》をたのみますぞ。」
 王様が馬車からおりると、猫吉は、そのあとからついて行きました。カラバ侯爵《こうしゃく》はお姫さまに手をかして、そのあとにつづきました。やがて大広間にはいると、おかざりしたテーブルの上に、りっぱなごちそうがならんでいました。じつは、このごちそうは、きょう、たずねて来るはずの友だちのために、人くい鬼がしたくし
前へ 次へ
全7ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ペロー シャルル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング