、できませんでした。そこで、ちいさいかぎを手にとって、ぶるぶる、ふるえながら、小べやの戸をあけました。
窓がしまっているので、はじめはなんにも見えませんでした。そのうち、だんだん、くらやみに目がなれてくると、どうでしょう、そこの床《ゆか》の上には、いっぱい血のかたまりがこびりついていて、五六人の女の死がいを、ならべてかべに立てかけたのが、血の上にうつって見えていました。これは、みんな青ひげが、ひとりひとり、結婚《けっこん》したあとで殺してしまった女たちの死がいでした。これを見たとたん、奥がたは、あっといったなり、息がとまって、からだがすくんで動けなくなりました。そうして、戸のかぎ穴からぬいて、手にもっていたかぎが、いつか、すべり落ちたのも知らずにいたくらいです。
しばらくして、やっとわれにかえると、奥がたはあわてて、かぎを拾いあげて、戸をしめて、いそいで二階の居間にかけてかえると、ほっと息をつきました。でも、いつまでも胸がわくわくして、正気《しょうき》がつかないようでした。
見ると、かぎに血がついているので、二三ど、それをふいてとろうとしましたが、どうしても血がとれません。水につけて洗ってみても、せっけんとみがき砂をつけて、といしで、ごしごし、こすってみても、いっこうにしるしがみえません。血のついたあとは、いよいよ、こくなるばかりでした。それもそのはず、このかぎは魔法《まほう》のかぎだったのです。ですから、おもてがわのほうの血を落したかとおもうと、それはうらがわに、いつか、よけいこく、にじみ出していました。
三
すると、その日の夕方、青ひげが、ひょっこり、うちへかえって来ました。それは、まだむこうまで行かないうち、とちゅうで、用むきが、つごうよく片づいた、という知らせを聞いたからだと、青ひげは話しました。だしぬけにかえってこられたとき、奥がたは、ぎょっとしましたが、いっしょうけんめい、うれしそうな顔をして見せていました。
さて、そのあくる朝、青ひげは、さっそく、奥がたに、あずけたかぎをお出しといいました。そういわれて、奥がたがかぎを出したとき、その手のふるえようといったらありませんでしたから、青ひげは、すぐとかんづいてしまいました。
「おや。」と、青ひげはいいました。「小べやのかぎがひとつないぞ。」
「じゃあ、きっと、あちらのつくえの
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