た。
『結構々々。これなら世界の果まで送っても大丈夫だ、ハッハハハ』とルパンは笑った。
[#8字下げ][#中見出し]※[#始め二重括弧、1−2−54]七※[#終わり二重括弧、1−2−55]人道のために[#中見出し終わり]
かくてトランク入のドーブレクは部下二人の手で自動車に乗せて巴里《パリー》へ運搬した。ルパンはクラリスの名でプラスビイユ宛に、
[#3字下げ]「尋ネ人発見セリ。明朝十一時例ノ文書ヲ渡ス」。
と至急電報を発しておいて直ちに急行で巴里へ向け出発した。ルパンは夢中になるくらい喜んでいた。彼が果しなき旅を続けていたにもかかわらず、突如ここに姿を現わしたのは、
『奇蹟ですね。サン・レモからゼノアに向け出発しようとした時、ふと、妙な気がし出して、汽車を飛び降りようとしたのでしたが、二人に止められたのです。で汽車の窓から首を出して何心なく過ぎ行くプラットフォームを見ると、伝言をしに来た駅夫の奴、両手をこすって、意味ありげな笑を洩している。ジッと見ているとハッと気が付いた。偽駅夫! 失敗《しま》ったドーブレクにやられていたと思うと今までの径路が万事了解したのです。解ったと思ったが遅い。で次の駅で幸にも引返しの列車があったのでそれで例の偽駅夫を尾行してここへ来たのでした』と、説明した。
巴里《パリー》に着いたのが日曜日の午後八時。ルバリュの方からは「荷物破損なし」との電報。プラスビイユからは「月曜午前は帰れぬ、午後役所へ来い」と云う返電がとどいていた。
その日の新聞には二人の死刑執行明日午前中に行われると報じてあった。午後、警視庁でプラスビイユに面会したクラリスは、連判状引渡しの交換条件としてジルベール及びボーシュレーの助命を切り出した。プラスビイユはアッと驚いた。
明日と確定した囚人の死刑執行猶予……大問題である、彼は余儀なく大統領に謁見を申込んで、真の連判状が手に入れば二人の生命は許してもいいとの内諾を得た。そして改めて二人の前へ帰って来てメルジイ夫人に訊いた。
『で全体、水晶の栓はどこにありました?』
『あの、マリーランドと云う煙草の函の中です』
『エッ、あの箱の中? 実に残念じゃ。あの函は私が何度手を触れたかしれないでしたになあ……で連判状を持っていらっしゃいますか』
『ええ、持参しています』
プラスビイユは連判状を手にして、
『やあ、まさしく
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