めて、山を近くに引寄せてよく見ると、それらのものの周りの地上には、金色の玉の粉末が乱雑に散らばっており、また、かみ砕いた松柏の葉や魚の肉が雑《まざ》っている、それらが続いて、ポツリポツリと頭を上げてきた。女※[#「女+咼」、第3水準1−15−89]は眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》ったが、それは自分が先ほど作った小さいものであるということが、容易《たやす》く判った。しかし不思議にも、何かで体を包んでおり、またそのうちの幾つかは顔の下半部に雪のように白い毛をはやしており、それは海水のために粘りついているが、尖った白楊の葉のようである。
「おやあ!」彼女は訝りかつ怖れて叫んだが、その膚《はだ》には粟が生じ、毛虫にでも触ったようである。
「天に在《まし》ます神よ、助けたまえ……」顔の下半部に白いもののはえている一つが、頭を上げ、嘔吐を催しつつ、途切れ途切れにいうのであった。「助けたまえ……身どもは仙術を学ぶものである。懐劫《かいごう》が到来して、天地が分崩するとは、誰が予期したろうか。……今|幸《さいわい》にして、天に在《まし》ます神にお出会いしましたが、蟻の命を助けたまえ、また仙……仙薬を授けたまえ……」彼は頭を上げたり下げたり、異様な恰好をしている。
彼女はただ茫然として、「何?」としかいい得なかった。
それらのなかの他の多くのものどもも、一様に嘔吐しながら、「神よ神よ」と叫んでは、それに続いて、また皆《み》んな異様な恰好をする。彼女は、それらのものに悩まされて、この一引きがとうとうわけのわからぬ禍《わざわい》を引き起したことをすこぶる後悔した。彼女は思案に暮れて、四方を見渡したが、一群の大きい亀が海面に嬉々として戯れているのが見えた。彼女は覚えず非常に喜び、直ちにその山を彼等の背中に載せ、「もう少し平穏なところに載せていっておやり!」と言いつけた。大きい亀どもは、肯いた様子をして、群《ぐん》をなし隊を結んで、それを載せて行った。しかし前の方が牽きすぎて、山の上から顔に白い毛のある一つ振り落され、その時早く水面にも落ちず、海辺に俯伏《うつぶし》になって、自分の脣《くちびる》を打った。女※[#「女+咼」、第3水準1−15−89]は可哀想に思ったがそのままにしといた。彼女は本当にそんなことに構っている暇もなかった。
彼女は一息吹いて、少し気持が
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