ありませんでしたの。ところが、それから二三秒もたたないうちに、恋敵のスミスからよこした最初の手紙を私は受取ったんですの」
「してみると君は化け物のようなものにしゃべらせたり、キュキュ云わせたりした事があるのかな?」アンガスが面白半分に訊ねた。
ローラは突然|身慄《みぶる》いをした、が声だけは慄えずに言った、「そうですのよ、ちょうど私がスミスから成功の事を知らせて来た二度目の手紙を読了《よみおわ》ったちょうどその時に、『お前をあやつにやるものか』というウェルキンの声を聞いたんですの。それが、まるでウェルキンがこの空にでもいるようにハッキリしてましたから、ほんとに怖くって、――私はもう気が狂ってるにちがいないと思うくらいでしたわ」
「もしあなたがそんなに気がつくくらいなら、何より気が狂っていない証拠だ。だが、その幽霊紳士は僕には確かに変梃《へんてこ》に思われるな。しかし二つの頭は一つにまさるわけだから――僕はあなたに力を借そう、どうだね、もしあなたが僕に、僕を片意地な実行家としてだ、あの婚礼菓子をもう一度、窓から持って来る事を許してくれるならだ……」
という彼の言葉が終るか終らないうち
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