この騒ぎの真中の警視庁へ、一通の手紙がまい込んだ。開いてみると、今回の窃盗事件はアルセーヌ・ルパンの指揮の下に行われ、贓品《ぞうひん》は翌[#「翌」は底本では「習」]日北アメリカへ向けて送られた。という文面である。警視庁は俄《にわか》に活動を進めた。同夜サンラザール停車塲で、一刑事のために彼の錦が一行李の中から発見された。
この窃盗はルパンの失敗に終った。
これを聞いたルパンは怒り絶頂に達して、直ちに筆を取って、スパルミエント大佐に一書を送った。それにはこう書いてあった。
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先日はただ一枚のみ頂戴しました。その時は一枚だけでよかったのですが、それをかく御取戻しになるにおいては、小生にも考があります。今度はきっと十二枚全部頂戴いたします。
右前以って御通知まで。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から4字上げ]アルセーヌ・ルパン
二
スパルミエント大佐は、フェイザンドリイ街とジュフレノアイ街の角にある邸宅をかまえた。
大佐は頑丈な体格の持主で、広い肩、黒い髪、また銅色の皮膚も屈強に見えた。夫人はすこぶる美人ではあるが、生来薄柳の質
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