一方ボートルレ少年の勝利は大変なものである。
 ある日ボートルレ少年の勝利の祝が開かれた。我も我もとその祝の会に集まったものは三百人以上であった。十七歳の少年は今日は凱旋将軍であった。ボートルレの得意と喜《よろこび》はどんなであったろう。
 しかし少英雄ボートルレは、やはり平常の無邪気なボートルレであった。少年は決して自分の勝利を自慢するような風をしなかった。しかし人々の少年を褒める言葉は大変なものであった。ジェーブル伯爵や、ボートルレのお父さんや、またバルメラ男爵なども、少年のこの祝の会に来ていて共に喜んでいた。
 ところが、突然にこの少年の勝利が破られてしまうようなことが起った。会場の片隅がにわかに騒がしくなって、一枚の新聞を振り廻している。新聞は人々の手から手に渡って、それを読む人は、みな驚きの声を上げている。
「読みたまえ!読みたまえ!」と向う側で叫ぶ。
 ボートルレ少年の父がその新聞を受けとって少年に渡した。
 少年は、人々をこんなに驚かせることは何であろうと思い、新聞を声高く読み始めた。しかしその声はだんだんと読んでいくうちに怪しく[#「怪しく」は底本では「怪くし」]乱れて
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