」
「何だって?」二人は叫んだ。
「偽物です、つくり物です、中は空っぽです!」
伯爵は彫像のかけらを拾ってみた。するとどうだろう、立派な大理石はただの漆喰に変っているではないか。そこにある彫像はまたとない実に立派な彫像なのであった。それがただの石膏細工《せきこうざいく》[#「石膏細工」は底本では「石豪細工」]に変ってしまっていた。
「ルパンです。実に偉いではありませんか。この偉大な礼拝堂はルパンによってみんな奪い去られてしまいました。一個年にたくらんだ仕事はこれです。実にルパンは偉い、何という恐ろしい天才でしょう。そしてこの礼拝堂の中には我々の知らない隠れ場所があります。ルパンは礼拝堂の中で仕事をしている間《あいだ》にそれを見つけ出したのです。ルパンはもし死んでいるとすれば、その隠れ場所にいるでしょう。」
三人は礼拝堂の扉を鍵で開けて中へ入った。ボートルレはまた調べてみた。礼拝堂の中も立派な物はみんな偽物に変っていた。ボートルレは伯爵の持ってこさせた鶴嘴《つるはし》で階段のところを壊し初めた。ボートルレの顔色は気が引き締《しま》っているためにまっ蒼であった。突然、鶴嘴は何かに当《あ
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