かに日を暮す考えなのだ。」
ルパンはそういって、赤色の白墨で壁に大きく字を書き始めた。
「アルセーヌ・ルパンは、エイギュイユ・クリューズの中の宝物《ほうもつ》を、全部|仏蘭西《フランス》国家に贈る。」
壮烈な肉迫戦
「ああ、これで我輩は安心した。」
この時扉の板が破れて、にゅーっと一本の腕が出て、鍵を開けようとする。
「畜生!喧しい、も少し静かにしろ。ところでボートルレ君にもお暇乞《いとまごい》をしよう。君はなかなか偉い、とうとうここまで発見したんだからね……」
ルパンはそういいながら油絵の右の端《はし》を開くと、小さな戸が現われた。ルパンはその握りを押えながら、
「御苦労々々々ガニマール君、お忙しいところを御苦労!」
どん!と銃声が響いた。ルパンはすぐ身を引いて、
「あははは、大《おお》べら棒!」
「御用だ!ルパン、神妙にしろ!」
扉はぐらぐらと揺れている。ルパンはガニマールの扉の方にいるので撃つことが出来ない。ガニマールは呶鳴った。
「ボートルレ君、加勢だ!構わん、撃て!」
ボートルレはどうすればいいか分らなかった。しかし今となっては撃たなけ
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