ってきた。
「おうい、助かったぞ。みんな起きろ」
 この一言で、島はまるで、蜂《はち》のすをひっくりかえしたようなさわぎになった。
 われらは、ついに助けられたのだ。小さな名もない島から、おとなりの、大きなミッドウェー島へ、海上六十カイリの引っこしをするのだ。
 みんな、大よろこびで、荷づくりがはじまった。めいめい研究したものを、とりまとめたり、めぼしい品物を集めたり、小屋をかたづけたり……
 糧食がかりの運転士が、一同にいった。
「みんな、不自由を、よくしんぼうしてくれた。きょうは、ありったけのごちそうをするから、えんりょなく註文してくれ」
 わかい者たちは、よろこんだ。
「かたい、白いめしをたいてください」
「ライスカレーを作ってください」
「パインアップル缶《かん》をあけてください」
「あまいコンデンスミルクを願います」
 料理当番は、てんてこまいだ。
 十六人は、島ではじめての、そしていちばんおしまいの、大ごちそうの朝飯のまえに、一同そろって、海水に身を清めてから、はるか日本の方角にむかって、心から神様をおがんだ。
 それから私は、整列している一同に、いった。
「いよいよ、この
前へ 次へ
全212ページ中204ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
須川 邦彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング