、白い布に墨で書いたものがしばりつけてあった。ほどいてひろげてみたら、蘇武からの手紙で、私は北のあれ野原に生きている、助けてください、と書いてあった。うそをいわないで、蘇武をかえしてください』
 と使者はいった。この計略にうまく引っかかった匈奴は、一言《いちごん》もなく、十九年めに蘇武をかえした。
 このことがあってから、手紙のことを、『雁の使』というようになったのです」
 聞く人も話す人も、たったいま、銅の札に、「助けてくれ」と釘で書いて、海鳥の首につけて、飛ばせたばかりだ。みんなは、蘇武の話に深く感動した。水夫長は、すっかり感心して、
「生徒さん、ありがとう。よくわかった。蘇武という人は十九年もがんばったのだなあ。――わしらは、これからだ」
 龍睡丸乗組員は、海の人として、不屈の精神をもった、りっぱな者がそろっていた。めったなことには、気を落さない。命のあるかぎり、いつかすくわれる、という希望をかたく持っていた。海流に配達してもらう郵便にも、鳥に運んでもらう手紙にも、望みをすてはしない。
 小笠原老人は、みんなにいった。
「いまの話を聞いて、この島はいい島だと、つくづく思うね。あた
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