で帰った親鳥は、まちがいなく、わが子をさがし出して、えさをやっている。まっ黒なはだかの、たくましい男たちが、うで組みをして、じっとこの親子の鳥を見ていた。
 漁業長は、
「おい、親のありがたいことが、わかったろう。これからは、いっそうからだをだいじにして、国に帰ったら、うんと親孝行をしろよ」
 といった。

 鳥が人を攻撃する。といっては、少し大げさだが、夕方、一日の作業を終って、さて一|風呂《ふろ》と、太平洋という、大きな自然の風呂にひたっていると、海鳥が、頭をつっつきに来て、あぶない。とがったくちばしで、ずぶり、やられてはたいへんだ。この大風呂にはいっている間、足の方はふかの用心、頭は海鳥の用心をしなければならなかった。
 海鳥は、海面にういているものは、なんでも、たべられると思うらしい。航海中、海に落ちた水夫が、たちまち、アホウドリの襲撃をうけて、ボートが助けに行くまでに、あの大きなとがったくちばしで、頭にあなをあけられたり、殺されたりした話もある。
 海鳥の肉は、たべなかった。ぜいたくをいうようだが、正覚坊のおいしい肉をたべつけていては、海鳥の肉は、まずくてたべられないのだ。

前へ 次へ
全212ページ中110ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
須川 邦彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング