ましたら、何とするのじゃ」
「そのようなお方がござりましたら、きっと日光様が御授け下さりましたお方に相違ござりませぬゆえ、いいえ、あの、わたくしもうそのようなこと申上げるのは恥ずかしゅうござります」
 きくや、実に十郎次の行動は直接なのです。直接以上に露骨でした。にじり寄ってむんずとその手をでも取ったらしい気勢《けはい》がきこえると共に、あからさまな言葉がはっきりときこえました。
「可愛いことを申す奴よ喃。身共がなって進ぜよう。誰彼と申さずに、この拙者が聟になって進ぜるがいやか」
「ま! でも、でもあのそんな、ここをお放し下されませ! あの、そんな今お会い申したばかりなのに、もうそんな――」
「いつ会うたばかりであろうと、そなたが可愛うなったら仕方がないわい。どうじゃ。拙者の心に随うてくれるか」
「でも、あの、あなた様は――」
「わしがどうしたと申すのじゃ」
「卑《いや》しいわたくしなぞが、お近づくことすら出来そうもないほど、御身分の高いお方のようでござりますゆえ、わたくし、空恐ろしゅうござります」
「しかし、恋に上下はないわい。この通りまだ三十になったばかり、妻も側女《そばめ》もないひとり身じゃ。そちさえ色よい返事致さば、どんなにでも可愛がってつかわすぞ。いいや、そちの望みなら何でもきき届けて進ぜるぞ。親御の仕官口もよいところを見つけて、世に出るよう取り計らってつかわすぞ。どうじゃ、言うこときくか」
「それがあの、本当なら倖《しあわせ》でござりますなれど……わたくし、あの只一つ――」
「只一つどうしたと言うのじゃ」
「………」
「黙っていては分らぬ。言うてみい、只一つどうしたと申すのじゃ」
「気になることがあるのでござります」
「どういうことじゃ」
「あの、小さい時、鞍馬《くらま》の修験者《しゅげんじゃ》が参りまして、わたくしの人相をつくづく眺めながら、このように申したのでござります。そなたは行末ふとしたことから、身分の高いお方のお情をうけるやも知れぬが、その節は必ずこの事守らねばならぬ。俗人のままの姿でお情うけたならば、その場で悲しい禍《わざわ》いに会わねばならぬゆえ、ぜひにもお頭《つむり》を丸め、御|法体《ほったい》になって頂いてからお情うけいと、このように申されましたゆえ、それが気になるのでござります」
「馬鹿な! 修験者|風情《ふぜい》の申すことが何の当に
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