らも築造中なのでござります。そればかりか城内二ノ廓《くるわ》にも多分の兵糧弾薬を秘かに貯え、あまつさえ素姓怪しき浪人共を盛んに召し抱えまする模様でござりましたゆえ、ようやく今の先その動かぬ証拠を突きとめ、ひと飛びに江戸表へ発足しようと致しましたところを、先日中より手前の身辺につきまとうておりました藩士共にひと足早く踏みこまれ、かくは窮地に陥入ったのでござります」
「左様か、左様か、お手柄じゃ。では、先程身共を英膳の矢場へ案内していったのも、うるさくつきまとう藩士達を身共共々追っ払って、その間に動かぬ証拠突き止めようとしてのことか」
「は。その通りでござります。御前は手前等ごとき御見知りもござりますまいが、手前等英膳と二人には、江戸におりました頃からお馴染深《なじみぶか》いお殿様でござりますゆえ、この城下にお越しを幸いと、万が一の折のお力添え願うために、お引き合せかたがたあの矢場へ御つれ申したのでござります。それもこれも藩の者共が、江戸に城内の秘密嗅ぎ知られてはとの懸念から、宿改め、武家改めをやり出しましたが御縁のもと、かく御殿様のうしろ楯得ましたからには、もう千人力にござります」
「よ
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