旗本退屈男 第二話
続旗本退屈男
佐々木味津三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)生欠伸《なまあくび》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)毎日|日《ひ》にちを

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あんなのとなに[#「なに」に傍点]
−−

       一

 ――その第二話です。
 前話でその面目の片鱗をあらましお話ししておいた通り、なにしろもう退屈男の退屈振りは、殆んど最早今では江戸御免の形でしたから、あの美男小姓霧島京弥奪取事件が、愛妹菊路の望み通り造作なく成功してからというもの、その後も主水之介が毎日|日《ひ》にちを、どんなに生欠伸《なまあくび》ばかり連発させて退屈していたか、改まって今更説明する必要がない位のものでしたが、しかし、およそ世の中の物事というものは兎角こんな風に皮肉ばかりが多いものとみえて、兄のすこぶる退屈しているのに引替え、これはまたすこぶる退屈しなくなり出した者は、主水之介にいとしい思い人の京弥を新吉原から土産に持って来て貰った妹の菊路でした。
 また人間、菊路でなくとも好きぬ
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