さようでござります。やまがらは、かわいい山のあの小鳥は、名所の国にいたころからの深いなじみ、おさないうちから飼いならし、使いならして、長年飼い扱ったことがござりますゆえ、恥ずかしいのもかえりみず、みんなこれもかたきゆえ、兄上ゆえと、小屋芸人の仲間入りをいたしまして、その日その日の口をすすぎつつ、兄のかたきを捜していたのでござります。するうちに、似た顔のこの兄弟が――」
「ふたりは兄弟か!」
「あい、腹違いの兄と弟であったとかいうことでござります。江戸の生まれで、由緒《ゆいしょ》はなんでござりますやら、兄は御家人くずれ、弟は小ばくちうちの遊び人、どちらにしてもならず者でござります。不思議なほどよく似たふたりが、通り魔のように現われて、因果な種をまいたのでござります。わたくしはこの弟めに見こまれ、兄のほうは――」
「あの音蔵の妻女に懸想したのか」
「そうでござります。おっしゃるとおりでござります。たびたびわたしにも言いより、兄のほうも音蔵さんのご家内にたびたび言い寄ったことでありましょうが、そんなけがらわしいまねができるものではござりませぬ。ああの、こうのと、あしらっているうちに、ついわた
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