右門捕物帖
やまがら美人影絵
佐々木味津三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)お駒《こま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)川西|万兵衛《まんべえ》
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1
その第三十八番てがらです。
「ご記録係!」
「はッ。控えましてござります」
「ご陪席衆!」
「ただいま……」
「ご苦労でござる」
「ご苦労でござる」
「みなそろいました」
「のこらず着席いたしました」
「では、川西|万兵衛《まんべえ》、差し出がましゅうござるが吟味つかまつる。――音蔵殺し下手人やまがらお駒《こま》、ここへ引かっしゃい」
「はッ。心得ました。――浅草宗安寺門前、岩吉店《いわきちだな》やまがら使いお駒、お呼び出しでござるぞ。そうそうこれへ出ませい……」
しいんと呼びたてた声がこだまのようにひびき渡って、満廷、水を打ったようでした。春もここばかりは春でない。――日ざしもまどろむ昼さがり、南町奉行所《みなみまちぶぎょうしょ》奥大白州では、今、与力、同心、総立ち合いの大吟味が開かれようとしているのです。
罪は浅草三番組|鳶頭《とびがしら》の音蔵ごろし、下
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