うでしたが、このかたはいったい、どういう掛かり合いのおかたなんです」
「…………」
「え? お嬢さま!」
「…………」
「じれったいね、むっつりの右門といわれるあっしが耳に入れて、このとおりにょろにょろとはい出してきたんです。櫃の中の大将に比べりゃかま首もみじけえし、からだもみじけえが、目はもっと光っているんだ。手間を取らせねえほうがおためですぜ。え? お嬢さん! はきはきいったらどんなものでござんす」
 たたみかけたことばに、千萩はわなわなと身を震わせていたが、とつぜん、おもてを伏せると、しみ入るような声をあげて、すすり泣きだしました。
 聞いていて、右門ということに気がついたとみえるのです。横から不審な若い男が割ってはいると、これさいわいというように口をはさみました。
「わたくしが申しましょう。あなたさまなら大事ござりますまい。そのかわり、くれぐれもご内密に頼みますぞ」
「そなた何もかもご存じか」
「知っている段ではござりませぬ。その女は、千萩は、なにを隠しましょう。このわたくしの妻たるべき女でござります」
「おいいなずけか!」
「そうでござります。どういうお詮議《せんぎ》で塗町の
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