よってみると、なるほど、橋の中ほどの欄干ぎわに、ずらりと六基の石仏が置いてあるのです。いずれも丈《たけ》は五尺ばかりの地蔵尊でした。
しかし、これがただ並べて置いてあるんではない。六体ともに鼻は欠かれ、耳はそがれ、目、口、手足、いたるところ無数の傷を負って、あまつさえ慈悲|忍辱《にんにく》のおつむには見るももったいなや、馬の古わらじが一つずつのせてあるのです。しかも、気味のわるいことには、何がどうしたというのか、その六体の地蔵尊の前に向き合って、いかにも可憐《かれん》らしく小さい小坊主が、ものもいわず、にこりともせず、白衣《びゃくえ》のえりを正しながら、ちょこなんと置き物のようにすわっているのでした。
「ちぇッ。やだね。生きてるんですかい」
見るが早いか、ここぞとばかり、たちまちやかましく早太鼓を鳴らしだしたのはおしゃべり屋です。
「てへへ、おどろいたね。え! ちょいと! なんてまあこまっけえんだろうね。豆に目鼻をけえたにしても、これほど小さかねえですよ。――ね、和尚《おしょう》、豆大将、おまえさんそれでも息の穴が通っているのかい」
「これはいらっしゃい。おはようございます」
「ウ
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