ゃまさしく大師さまですよ」
「偉いよ。おまえにしちゃ大できだ。いかにも真言宗のお寺だが、どうして眼《がん》がついたかい」
「バカにおしなさんな。だから、さっきもお断わりしておいたんですよ。あっしだっても字ぐれえ読めるんだからね。この上の門の額に、ちゃんとけえてあるんじゃねえですかよ。一真寺、浄円題とね。浄円|阿闍梨《あじゃり》といや、天海寺の天海僧正と、どっちこっちといわれたほどもこの江戸じゃ名の高かった真言宗のお坊さんなんだ。そのお坊さまのけえた額がこうして門にかかっているからにゃ、まさにまさしく真言派のお寺にちげえねえですよ」
「ウフフ。なかなか物知りだね。おまえにしちゃ珍しく博学だが、このお寺はどのくれえの格式だか、それがわかるかい」
「え……?」
「寺格はどのくれえだかといってきいてるんだよ」
「くやしいね」
「あきれたな。知らねえのかい。そういうのがバカの一つ覚えというやつさ。定額寺《じょうがくじ》といってね、お上からお許しがなくっちゃ、むやみと山門にこういう額は上げられねえんだ。相撲《すもう》の番付にしたら、りっぱな幕の内もまず前頭《まえがしら》五枚めあたりよ。これからもあ
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