蘭の花のごとき乳ぶさのあたりへ軽い活の一手を入れながら、莞爾《かんじ》としていったことです。
「痛いめに会わせましたね、一石二鳥の右門流といやちっと口はばったいが、一つにゃやつらをおびき寄せるため、二つにゃおまえさんにおけがのねえようにと、涼んでいてもらったんですよ。そのかわりに、このとおり幸助どんの心をこめた玉章《たまずさ》がおみやげだ。二度の奥勤めもできますまいから、しかるべき法を講じてね、早く長火ばちの向こうにおすわりなせえよ。――伝あにい、用を足してきたかい。人さまが手生けの花見でもけりがついたかな。花がこんなところでも散ってくらあ。かえるかね――」
 と、こともなげに立ち去りました。



底本:「右門捕物帖(三)」春陽文庫、春陽堂書店
   1982(昭和57)年9月15日新装第1刷発行
入力:tatsuki
校正:kazuishi
2000年4月14日公開
2005年9月22日修正
青空文庫作成ファイル:
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