の言いがかりに責められるを悲しんで、知らぬまに窯《かま》へはいり自害したに相違ござりませぬ。せめてものなごりにと、このみごとな群青焼きを置きみやげに自害したのでござります」
「そうであったか! つかなんだ。つかなんだ。それまでは察しがつかなんだ。そちも音に聞こえた陶工、名人達者といわれるほどの者の心に、そのような濁りあるまいと存じて疑うてもみなかったのだ。それにしても、泥斎!――魔がさしたのう!」
「面目ござりませぬ! 源五兵衛親子ふたりを殺した泥斎の罪ほろぼしはこれ一つ! ごめんなされませ!」
突然でした。悲痛な声もろともにすっくと立ち上がりざま、そこのたな奥にあった素焼きのかめをかざし持って、頭から五体一面に中の水液をふりかぶったかと思うと、泥斎の覚悟また壮烈です。
「これこそ南蛮渡来の油薬、とくとごろうじませい」
叫びつつ火打ち石取り出して、五体かまわずに切り火を散らし放ったかと見えるや、全身たちまちぱっと火炎に包まれました。同時に、雪の庭へ駆けおりると、生き不動です、生き不動です。火に包まれた不動明王さながらの姿の中から、悲痛な絶叫を放ちました。
「弥七郎許せよ! そなたも焦熱地獄の苦しみうけて相果てた! せめてもの罪ほろぼしに、この泥斎も業火に身を焼いていま行くぞ! 許せよ! 許せよ! いま行くぞ!」
叫びを聞いたとみえて、そのときまでもなお土室の中に隠れすくんでいたらしいあの粂五郎が、まろびつころびつ駆けてくると、遠くからおろおろとして呼ばわりました。
「なにをなさります! おやじさま! そのありさまは、そのお姿は、なんとしたのでござります!」
あと先かまわず走り寄ろうとしたのを、
「行くでない! 寄るな! 行くな!」
身じろぎもせずに端座したままで名人右門が、ぴいんと胸にしみ入るような声もろともしかりつけました。
「死なせい! そちゆえに犯した罪を悔いての最期じゃ。名工の最期飾らせい!」
放たれた声といっしょに、断末魔迫ったか、ばたり、泥斎は火炎に包まれたまま、雪の庭にうっ伏しました。――同時に、まばたきもせず見守っていた名人の口から一言、沈痛な声が放たれました。
「みごとじゃ。泥斎、安らかに参れよ!」
はっと折り曲げたように首をたれると、二筋、三筋、そのほおにしずくの流れをおとしました。――ほっとわれに返って、伝六もいったものです。
「
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