わい! 解けんわい! この人形のなぞばかりは、なんとしても解けぬ。自害にちげえねえんだ。火口一つより出はいりする口はねえ、その口を中から塗りこめてあったからにゃ、自害にちげえねえんだ。だのに、だのに、くやしいな! 伝六ッ。――みろ! この人形を、とっくりとみろ!」
「み、みているんですよ。そ、そんなに悲しそうな声でおこらなくとも、ちゃんと見ているんですよ」
「見たら、おめえにだってもわかるはずだ。ワガ姿ヲ写ス、弥七郎作と銘が入れてあるんだ。女じゃねえてめえの姿だ。その人形を抱いて共焼きに蒸され死にした弥七郎の了見がわからねえんだ。女なら考えようもある。解きようもある。好いた女にそでにされて、慕っても慕っても思いが通らねえので、せめてもその女の姿を写しとって、心中がわりに蒸され死にしたってえなら話もわかるが、そうじゃねえんだ。てめえの姿を抱いて共焼きになってるんだ。くやしいな! 伝六。わからねえ! 解けねえ、このなぞばかりゃ解けねえよ!」
「だ、だんなにわからねえものなら、あっしに、わたしに、と、解けるはずアねえんですよ。――生まれ変わりてえな。知恵の袋をうんとこしこたま仕込んで、今ここでぴょこんといっぺんに生まれ変わりてえな。く、くやしがらずと、そんなにくやしがらずと、なんとか知恵の水の井戸替えしてみておくんなせえな」
「いくら考えても、それがわからねえんだ。未熟だな……申しわけがない。伊豆守様にお会わせする顔がない……、な! 伝六! 未熟だな。まだおいらも修業が足りねえんだ……この世に、おいらが考えて、おいらがにらんで、解けねえなぞはなにひとつあるめえと思っていたのに、人の心の奥の奥の奥底だきゃわからねえな。いいや、芸道に打ち込んだ者の、魂まで打ち込んで芸道に精進した者の、命までかけた心の秘密ア、心のなぞは、さすがのおいらにもわからねえわい――。未熟だな……未熟だ、未熟だ。くやしいよ。伝六、くやしいな……情けねえな……身の修業の足りねえのが、いまさら恨めしいわい……」
せつなです。
「申しわけござりませぬ!」
不意でした。肺腑《はいふ》を突きえぐるようなその声を、黙々として聞いていた泥斎が、とつぜん言い叫んだ声もろともに、がばとそこへひれ伏すと、意外な秘密を明かしました。
「すみませぬ。あいすみませぬ。この老いぼれが隠しだてしていたのでござります」
「なにッ、
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