をぬけながら、裏口へ回っていくと、しきりに家の棟《むね》の様子を探っていましたが、ふと目についたのは庭奥の物置き小屋らしい一棟でした。
「ほほう、あれだな」
「え? あの物置き小屋がどうしたんですかい」
「いくらばくちはお上がお目こぼしのいたずらだっても、うちの表べやでやっちゃいねえんだ。あの物置き小屋がいんちきばくちの開帳場にちげえねえから、しりごみしていずと乗り込みな」
押し入ろうとしたせつな!――はしなくも聞こえたのは、ガラガラポーンという伏せつぼの音ならで、悲鳴に近い女の叫びです。
「いやでござんす! そんなこと、そんないやらしいこと、何度いわれてもいやでござんす!」
しかも、ドタンバタンと必死に抵抗でもしているらしいけはいがあったので、一躍、ガラリ――、さっそうとしておどり入ると、高窓一つしかない暗いへやの中を鋭くぎろりと見まわしました。同時に目を射たのは、怪しげな三人の姿です。ひとりはいぎたなく立てひざをした四十がらみの大年増《おおどしま》。むろんそれが女ばくちのしれ者と名の高い三つ輪のお絹に相違なく、その隣にてらてらと油光りのする卑しい顔に、みだらな笑いを浮かべて、つくねいものごとくすわっていたのは、ひと目にいなかの物持ちだんなとわかる好色そうな五十おやじでした。そのおやじの淫情《いんじょう》に燃え走る油目に見すくめられながら、へやの片すみに、三十そこそこの、ひとふぜいもふたふぜいもある、美人ぶりなかなかによろしい中年増がふるえおののいていたのを見つけると、我を忘れて、きょうだいが武者ぶりつきながら、おろおろと叫びました。
「かあだ! おっかあだ! 悲しかったよ。おらは、おらは、悲しかったよ。もういやだ。もうどっかへ行っちゃいやだよ。な! かあや! いやだよ! いやだよ!」
左右から顔をすりよせて泣き入りました。――とたん! それと様子を察したとみえて、あたふたと五十おやじが逃げ走りだそうとしたのを、
「なんでえ、なんでえ。何をしゃらくせえまねしやがるんだ。おれの十手だって、ものをいうときがあらあ。じたばたすると、いてえめに会うぞ」
押えとったは伝六。こういうふうな性の知れたお上りさんのおやじが相手となると、伝六も強くなるからかなわない。しかし、三つ輪のお絹はさすがにふてぶてしく横っすわりにすわったままで、にったりしながら名人に食ってかかったも
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