う。わきざしでなし、短刀でなし、まさしく小柄《こづか》で突いた突き傷だな」
ずばりとホシをさしておくと、気味のわるい町方役人が来たものじゃな、というように、じろじろとうさんくさげに見ながめているあるじのほうへ、いんぎんに一礼していいました。
「お初に……八丁堀の者でござります。とんだご災難でござりましたな」
いいつつ、名人十八番中の十八番なるあの目です。見ないような、見るような、穏やかのような、鋭いような、ぶきみきわまりないあの目で、一瞬のうちに主人の全体を観察してしまいました。
したところによると、それなるあるじがなんとも不思議なほど若すぎるのです。非業の最期を遂げている女を三十五、六とするなら、少なくもそれより七、八つは年下だろうと思われるほど若いうえに、男まえもまたふつりあいなくらいの美男子なのでした。加うるに、どうも傲慢《ごうまん》らしい! 見るからに険のあるまなざし、傲然《ごうぜん》とした態度、何か尋ねたら、お直参であるのを唯一の武器にふりかざして、頭からこちらを不浄役人扱いしかねまじい不遜《ふそん》な節々がじゅうぶんにうかがわれました。
しかし、それと見てとっても、
前へ
次へ
全49ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング