のも、おんなじ比丘尼小町のへび使いのその女行者だというんですかい!」
「決まってらあ! 捨てておいたら、三人の小町娘が生き血を吸いとられてしまうかもしれねえんだから、早いところしたくをしたらいいじゃねえか! へびがこわかったら、鎧《よろい》でも兜《かぶと》でもかぶってこい!」
いっているまに、まめやかなお公卿さまがまめまめしい働きでした。
「駕籠なら三丁表につれてめえりましたよ」
「そうかみろ! のどかなあにいに、ヒリリと一本、小粒の辛いところを先回りされたじゃねえか! じゃ、そっちの町人衆! 青ざめていねえで、早く乗りなよ」
きくだに妖艶《ようえん》、その面影もさながらに彷彿《ほうふつ》できるへび使いの美人行者、そもなんの目的をもって三人の小町娘をさらい去ったか、疑問はただその一点! 日は旱天《かんてん》、駕籠は韋駄天《いだてん》。濠《ほり》ばた沿いをただ一路湯島に駆け向かいました。
5
行きついてみると、それなる祈祷所がすこぶる不審。比丘尼行者が祈祷を売り物にする住まいなら、玄関出入り口の構えなぞ、少しは神々《こうごう》しいこしらえでもしてあるだろうと思いのほか
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