た。
かくして、容易に右門が内側から門を開きましたので、伝六は女を引き連れながら、ただちにそのあとにつづきました。はいってみると、これがどうしてよくもこれだけためあげたと思われるほどな一倍の広大きわまりない大邸宅で、ことに目をひいたものは、家棟《やむね》にすぐとつづいた二戸前の土蔵でありました。
右門はそれを見ると、ふふんというように微笑を漏らしていましたが、女の手引きがありましたものでしたから、ただちに主人眠白の居室に押し入りました。と同時に、眠白もむくりと夜具の中から起き上がりながら、もう幾筋も大しわが寄っているくせに、てかてかといやにあぶらぎっている女好きらしい下品な顔をふり向けながら、ぎょッとなって、右門主従を見つめていましたが、それと気がついたものか、とたんでありました。やにわとまくらもとのわきざしを、がらにもなく取りよせましたものでしたから、当然のごとく名人の口にカラカラという大笑がわき上がると、いとも胸のすく小気味のいい啖呵《たんか》が、ずばりときられました。
「ふざけたまねはよしねえな。敬四郎たあ、ちっと品が違うぜ。むっつり右門とあだ名のおれを知らねえのかい」
と
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