いかけました。
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けれども、そこまでははっきりと足跡が取れましたが、そこから先が少々ふつごうなことになってしまいました。というのは、ご門番が教えたような身分不相応の駕籠を打たせていったというその距離は、ほんのそこから二、三町ばかりのことだけで、佐内坂への曲がりつじまでさしかかると、そこにもう一丁からの別な町駕籠が待ち構えていて、ほとんどむりやりのように秀の浦をそのほうへ移し乗せながら、四人の替え肩づきでいっさんに駆けだしていったということが判明したからです。それも、駆け去っていった方向がだいたいながらもわかればまだいいのですが、あいにくと時刻はしゃくなたそがれどきで、あまつさえ乗せ移していったというその駕籠が、前の上駕籠とは品の違った、いっこう目じるしも特徴もない町駕籠でしたため、残念なことにはだれにきいてもその先がわからなくなってしまったものでしたから、とうとう伝六が音を上げてしまいました。
「ちぇッ、おかしなまねをしやあがるじゃござんせんか。どこへ消えちまったんでござんしょうね」
しきりと首をひねっていましたが、しかし右門はいたっておちつきはらったものでした。せ
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