いたったか、事は疑問の慓悍児《ひょうかんじ》秀の浦の告白にすべての興味がつながれることになりましたが、しかし総じて物事というものは、とかくいま一歩ひと息というところで蹉跌《さてつ》しがちなものです。
「え? 秀の浦でごんすかい。あの野郎は、だれかごひいき筋のお客から、お酒のごちそうがあるんだとか申しまして、ほんの今ひと足先にけえりましたよ」
はせつけて秀の浦の在否をきくと、惜しいことにひと足違いでたち帰ったあとといったので、右門はいささかの狼狽《ろうばい》も見せませんでしたが、伝六がすっかりあわを吹いてしまって、八つ当たりにどなり散らしました。
「バカ野郎ども! おれさまたちが御用があるっていうのに、なぜ無断でけえしたんだ!」
「だって、からだがあきゃ、こっちの気ままでごんすからね。あの野郎もきょうの一番で、うめえご祝儀にあずかれると思ったか、まるくなってけえりましたよ」
「どっちへ行ったかわからねえか」
「さあね。どことも行き先ゃいわねえようでしたが、ここをまっすぐ北のほうへめえりましたよ」
だいたいの方角がわかりましたものでしたから、右門はまだぶつぶつ鳴っている伝六を促して、た
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