ると、おごそかに申し渡しました。
「七郎兵衛の罪は良俗を乱し、美風を損じたる点において軽からざるものがあるが、右門特別の慈悲により、お公儀への上申は差し控えてつかわすによって、ありがたく心得ろ。そのかわり、生島屋の身代六万両はこんにちかぎり二分いたし、その一半はこれなるお兄人八郎兵衛どのにつかわせよ。どうじゃ、よいか」
「えッ。では、三万両もの大金をただくれてやるんでござりまするか」
握り屋の握り屋らしい面目を遺憾なく発揮いたしまして、七郎兵衛が不服そうに申し立てたものでしたから、右門のいつにない初雷がその頭上に落下いたしました。
「控えろッ、控えろッ。ただくれてやるとはなにごとじゃッ。そのほうこそ、ただもらっているではないかッ。それとも、六万両みんな八郎兵衛どのにつかわすようお公儀に上申してもさしつかえないかッ」
「め、めっそうもございませぬ。では、三万両さしあげるでござります。さしあげますでござります」
六万両みなつかわそうかといったことばに、ことごとく震え上がりながら、手もなくそこにひれふしましたので、右門は微笑をふくみながら、いとここちよげに立ち上がると、だが、かえりしなに
前へ
次へ
全47ページ中46ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング