長崎のほうの親戚《しんせき》へ預けてあった娘を呼びよせたってこういうんですが、それはまあいいとして、そのかわり今までふたりあった男の子どものうちの、弟むすこってほうが、女の子のふえるといっしょに、ひょっくり消えてなくなったんですよ。長兵衛のいうには、長崎のその親戚へ女の子の代わりに次男のほうを改めてくれてやったと、こういってるんですがね。いずれにしても、男がひとり消えてなくなって、そのかわり女の子がひょっくりとひとりふえてきたんだから、もしや、と思ったんですがね」
「では、なんじゃな、そこに何か細工があって、若主人の陽吉は実際は女であり、嫁に来たろうそく問屋の娘っていうのが、もしやほんとうは男であるまいかと、こういう疑いがわいたと申すのじゃな」
「へえい、あっしだけの推量なんでごぜえますが、陽吉さんの別ぶろのことといい、ろうそく問屋の次男坊の見えなくなったことといい、なんかうすみっともねえ小細工しているんじゃねえかと思うんですよ」
なんぞ深い子細があっての盗みだろうとはすでに見きわめがついていましたが、七郎兵衛一家の上に、陳述のような疑雲がかかっているとするなら、ここに事件は意想外な
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