りをしていましたのじゃな」
「はい、鉄山と申しまして、わたくしよりか太鼓を打つことがじょうずでありました」
「なるほどのう。でも、今きけばくまに殺されたとかいうてでしたが、そのくまというのは、けだもののくまでありましたか、それともくまという名の人でありましたか」
「それがくまという名の人じゃやら、けだもののくまじゃやらわかりませぬゆえ、毎朝お斎《とき》のおりにいっしょうけんめい如来《にょらい》さまにもお尋ねするのだけれど、どうしたことやら、阿弥陀《あみだ》さまはなんともおっしゃってくださりませぬ」
いうと少年僧は、阿弥陀如来の何もいってくれぬことが、くやしくてくやしくてならぬというように、突然じわじわと両眼をいっぱいのしずくにうるませました。右門もついそのむじゃきな信仰に胸を打たれて、ほろほろと涙を催しましたが、それだけにいっそうこの少年僧の偽りを含まぬ陳述は、しだいに職業本能をそそりましたので、語をつづけながらさらにやさしく尋ねました。
「では、お兄いさまが、どこで、どのようにご最期をとげたかもわかりませんのじゃな」
すると、少年僧は急に元気づいて、活発に陳述いたしました。
「い
前へ
次へ
全44ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング