》をも弔ってつかわせよ」
 そして、みずから手を添えてやると、たとえ自業自得に倒れた者たちではあっても、いったん死者の数にはいったものは、このうえ恥ずかしめてはならぬというかのように、そこの小屋からむしろを取りはずしてきて、六つのあさましい骸《むくろ》へおおいかぶせてやりました。
 ――並み居る見物人は、抜いてもあざやかであるが、切ってもまた、最後まで右門らしさを失わないその人がらのゆかしさに、いまさらのごとく胸を打たれたとみえて、いっせいに感嘆のどよめきをみせました。
 右門十番てがらは、かくしてその捕物《とりもの》秘帳に、最初の血で描かれた美花をさらに一つ添えて、いよいよ次の第十一番てがらにうつることとなりました。



底本:「右門捕物帖(一)」春陽文庫、春陽堂書店
   1982(昭和57)年9月15日新装第1刷発行
入力:tat_suki
校正:はやしだかずこ
1999年12月21日公開
2005年7月1日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全22ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング