ました。そのすがすがしさがまたくるわの水でみがきあげたすがすがしさなんだから、普通一般の清楚《せいそ》とかすがすがしさといったすがすがしさではなく、艶《えん》を含んでかつ清楚――といったような美しさのうえに、そったばかりの青まゆはほのぼのとして、その富士額の下に白い、むっちりともり上がった乳をおおっている浜|縮緬《ちりめん》の黒色好みは、それゆえにこそいっそう艶なる清楚を引き立てていたものでしたから、同じ遊女のうちでもこんなゆかしい品もあるかと、ややしばらく右門もうち見とれていましたが、かくてはならじと思いつきましたので、こういう女の心を攻めるにはまた攻める方法を知っている右門は、ずばりと、いきなりその急所を突いてやりました。
「まだ存じまいが、そなたの好いている人は、ゆうべ首をくくりなすったぞ」
「ええ! あの、清、清さんは死になましたか!」
 よほどの深い愛情を今も清吉に寄せているとみえて、薄雪は右門のことばを聞くと、もうすでにおろおろとしながら地ことばと里ことばをまぜこぜにして、身も世もあられないような驚愕《きょうがく》を見せたものでしたから、右門はここぞと、隠されているなぞをあ
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