うな大胆不敵なことまでいたしおりましたか。――いや、なによりなことを承って重畳《ちょうじょう》でござる。下手人の人相書きはすでに上がっているゆえ、二日《ふつか》とたたぬうちに、きっとこの右門が、ご主人のかたきを討ってしんぜましょうよ。では、念のために、仏をちょっと拝見させていただきますかな」
「はっ、どうぞ……」
ただちに妻女が仏間へ案内いたしましたので、伝六ともどもついてまいりましたが、しかし、右門はひと目その死骸《しがい》を見ると、おもわずあっと顔をそむけました。――なんたる残虐な切り方だったでありましょうぞ! 腰に見舞われたふた太刀《たち》の致命傷はそれほどでもなかったが、何がゆえそこまでも残虐をほしいままにする必要があったものか、恒藤権右衛門の顔は、目も鼻も口も、どこにあるかわからないほど、めったやたらに切りさいなまれてあったからです。
「いや、おきのどくなことでござった」
あまりのむごたらしさに、さすがの右門も長居に忍びなかったものでしたから、そうそうに悔やみを述べて引き揚げると、それだけに下手人の残虐を強く憎んで、断固としながら伝六にいいました。
「ちくしょう! むだな
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