を打ちました。
「では、てまえのほうからお尋ね申すが、もしやそなたは刀の詮議《せんぎ》をなさってではござらぬか」
 と――、ずぼしに的中したかのごとく、おもわずぎくりとなった様子でしたが、そのほしを見ぬかれてはと思ったものか、ようやくにして相手が口を開きました。
「慧眼《けいがん》、いまさらのごとくに感服つかまつりました。それまでも、わたくし腹中をお見通しでござりましたら、このうえ隠すは無益にござりますので、いかにも胸中の秘密お明かしいたしまするが、けっしてお他言はござりませぬでしょうな」
「かくのとおりにござる」
 莞爾《かんじ》として笑《え》みをのせると、かちりと強く金打《きんちょう》して見せましたものでしたから、たのもしげな右門のその誓約にようやくお小姓は愁眉《しゅうび》を開いて、事の子細を打ち明けました。
「何を隠しましょう、わたくしは越前松平家のお小姓にて、石川|杉弥《すぎや》と申す者にござりまするが、殿からお預かり中のけっして世に出してはならぬたいせつな一腰を、お目がねどおり何者にか盗みとられ、殿よりもきついおしかりをこうむりましたので、爾来《じらい》六日ばかりというもの、
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