うのような顔つきをしていると、反対に右門はにやにやとやっていましたが、まもなくそこに碁盤をさげ出しながら、すましきっていいました。
「じゃ、さっそく、これからおはじきを始めるからね」
そういうと、ほんとうにお糸坊を相手にしながら、もうぱちぱちとおはじきをやりだしたもので、しかもなにがそんなにおもしろいものか、あきもせずに夕がた近くまで同じことを繰り返し繰り返しやっていたものでしたから、伝六がとうとうお株を始めました。
「らちもねえことするにもほどがごわさあ。くそおもしろくもない、あっしゃもうけえりますよ」
「そうかい。けえりたきゃけえってもいいが、でも、すぐとまた来なくちゃならんぜ」
それを意味ありげに引き止めながら、しぎりと右門はお糸を相手に興がっていましたが、やがてまもなくのことです。そろそろたそがれが近づきかかったのをみると、突然お糸をこかげに招いて、耳へ口をよせながら、なにやらこまごまと秘策をさずけました。
「まあ、そう。ええ、わかりました、わかりました。おもしろいのね」
すぐと了解がついたものか、きゃっきゃっといって、お糸坊は丸くなりながら表へ駆けだしたようでしたが、四
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